1日1文、現実逃避
http://lemonporice.yu-nagi.com/
日記・文章の練習帳。
挑戦中のお題→恋する動詞111題 。
REDSTONE無名・二次・腐カテゴリーからそれぞれどうぞ。
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「冒険者のススメ」より
剣士(ナスタ)→シーフ(フェシス)
+剣士戦士(ケイルン)、シフ武(ジョン)
剣士(ナスタ)→シーフ(フェシス)
+剣士戦士(ケイルン)、シフ武(ジョン)
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なにやら焦げくさいにおいがする。
冒険者の卵たちが日々訓練にいそしむこの学び舎では、練習中に案山子に放った火のカケラが服について焼けてしまった、なんて話はよくあることだ。染みついたのか、誰かしらがいつも焦げているのか、ここではまれにそういうにおいがする。その学び舎の長たるケイルンが厳しい色に顔を変えたのは、布地が焦げ付いたにおいに混じって、火薬特有のにおいがしたからだ。それもシーフたちが罠に使うには適量を超えた、大量な火薬が発火したにおい。煙るようにかおるそれが倉庫の方角からしてくる、ということもあって、ケイルンは急ぎ足でにおいの元を辿っていた。
だから、倉庫に保存していた火薬の大樽ではなく、教え子の子供が元凶だとしれて、ケイルンはほっと胸を撫で下ろしたのである。
だが、どうにも様子がおかしい。頻りに棚の陰から廊下の向こうを伺っている仕草は、まるで何かから隠れようとしているようだ。ケイルンは首を傾げた。
「おーい、ナスタ!」
「うわっ。」
声を掛けると、練習用両手剣と盾を背負ったその小さな後姿がビクリと震え、
「先生、静かにっ!しーっ!」
わたわたと手を振り回しながら、ケイルンの元へ駆けてきた。近くで見ると、火薬のにおいを纏ったナスタは、服はボロボロで、空色の髪は毛先がチリチリに焦げ付き、顔は煤けている。「どうしたんだ?」と、ケイルンが口を開くと、再びナスタが「しーっ」と叫んだ。服の裾を引かれてケイルンが屈むと、ナスタは「静かにお願いします」と声を落として言い、口の前で指を立てて見せた。小さな声も、不安そうにきょろきょろと後ろを振り返っている姿も、常の溌剌としたナスタからはかけ離れていて、ケイルンはますます首を傾げる。ナスタに合わせてケイルンは声を落とした。
「派手な冒険だったみたいだな、すごい格好だ。それで?何をしてるんだ?」
「これはちょっと…いろいろあったんです。今は、その…隠れてるんです。」
「何から?」
「フェシスからです。」
フェシスと言えば、ナスタの相棒である少年シーフだ。
傾げた首がいよいよ肩に着きそうになり、ケイルンは反対側に首を傾げた。
「なぜだ?かくれんぼか?」
「……。」
ぎゅっと下唇をかみしめて、ナスタは下を向いてしまった。床を見つめる空色がユラユラと水の溢れてしまいそうなグラスの表面のように揺れている。火薬のにおいといい、随分と穏やかな話ではないようだ。
キャンディーは体の傷や消耗した精神力を回復させる魔法アイテムだ。この甘さは、心に安らぎも与えてくれることを、ケイルンは知っている。
「まあ、これでも食べて落ち着きなさい。それから、もしワシに話せることなら、話してみなさい。」
キャンディーSPを差し出すとナスタはようやく顔を上げた。勢いよく受け取って、がじがじとキャンディーを平らげると、意を決したようにナスタがケイルンの目を見た。
「ぼくは、運が無さすぎるんです!」
****
西口の墓地に最近出没する野良犬を退治する、簡単なクエストのはずだった。
フェシスが罠を大量に設置し、ナスタが野良犬を誘い出し、体力の減ったところを二人で倒す。このやり方で、順調に二人は野良犬を狩れていた。
けれど、ナスタ曰く”不運”というものが突然やってきたそうだ。
ナスタが足を滑らして転倒した。こけた拍子に触れた墓石は、たまたま老朽化していて、あっさりと倒れた。その隣にあった墓石もその隣も…、周囲の墓石はどれも脆く、そして密接していた。まるでドミノ倒しのように、一帯の墓石は倒れていったそうだ。
ただ佇んでいただけのゴーストやゾンビは、自分の墓石が壊されたのを見て怒り狂い、巻き添えをくらった他のモンスターも襲い掛かってくる。倒しても倒してもモンスターはどんどん増えていく。ゴーストからは火炎の集中砲火を、ゾンビからは囲まれて袋叩きにされて…散々な目にあったそうだ。
****
「…それはツイてなかったなのう。その状況で、よく生きて帰ってこれたもんだ。」
「フェシスのおかげでなんとかなったんです!」
パッとナスタの瞳がキラキラと輝いた。トーンダウンしていた声に、いつもの躍動感が戻ってくる。
「たまたまフェシスが持ってた火薬の瓶が割れて、設置してあった罠の上にどばーって拡がったんです。それを見たフェシスが閃いて!火薬をどんどん撒いて、罠を書き換えたら罠が全部どかーんって爆発しまして!ほとんどのモンスター吹っ飛ばしてくれました!」
「そっちはツイてたな!ははー。それで、フェシスが「ナスタのせいで酷い目にあった」って怒ったから顔を合わせたくないって話か?」
途端に、両拳を握りしめて熱く語っていたナスタの顔から生気がぬけて、しょぼくれた表情に戻ってしまった。
「…違います。フェシスはぜんぜん怒ってないんです。むしろ、ゴーストの魂がぎょーしゅくされた珍しい宝石?が、手に入ったってよろこんでるくらいで…。」
「フェシスは本当に運がいいな!それなら、なんでフェシスを避けるんだ?」
「ぼくがフェシスに合わせる顔がないからです!フェシスは優しいから、気にするなって言ってくれてるけど…。けっきょく、ぼくが運が無かったせいで、フェシスにケガをさせたのは事実ですし!フェシスはぼくを助けてくれるためにやってくれたのに、フェシスだけジョン先生に叱られてるし!」
ジョン先生というと、冒険者の家の戦闘教官ジョン・マルコのことだ。シーフや武道家のスペシャリストでもあり、フェシスの師でもある。
「どうしてジョンが?」
「…フェシスはまだ火薬に触っちゃいけなかったらしくて。」
「なるほどのう。」
ケイルンよりも先にジョンは火薬のにおいを嗅ぎつけたらしい。危険な火薬を多量に勝手に持ち出し、しかも使ったとあっては、かの短気で誰よりも教師らしい教師の友人が、どんな風に怒りをあらわにしたのか、付き合いの長いケイルンには想像がついた。
「ぼくがあんなトラブル引き起こさなかったら、フェシスも怒られずにすんだのに…。」
「持ち出した時点で、いつか叱られていたとおもうがのう。悪いことがたまたま重なっただけで、そう深刻になることないだろう。」
「だって、今日だけじゃないんですもん!いつもそうなんですよ。ぼくが、すっごく運が悪くて、簡単な任務でもいつも何かが起きるんです…。そのたびに、フェシスは巻きまれて、ぼくのこと助けてくれる。ぼくのこの運の無さが、いつかもっと危険なものを引き寄せて、フェシスに大けが負わせちゃうんじゃないか。…そうなる前に、もう一緒に居ないほうがいいのかな、って思って。」
「だからフェシスを避けてると?」
深刻な表情で、ナスタはこくりとうなづいた。
「どうしてぼくはこんなに運が無いんでしょうか…。」
トラブルメーカーな剣士と、ラッキーボーイなシーフ。どこかで聞き覚えのある言葉だ。そういう風に揶揄されなくなって、随分と月日が経っていたらしい。懐かしさに思わずケイルンが笑ってしまうと、ナスタが訝しそうな顔で見上げてきた。
「なあ、ナスタよ。よく聞きなさい。」
いつも剣術の指南をしているときのように、ケイルンはナスタの目を正面から受け止めた。不安げな表情の彼の頭をあやすように軽く撫でた。
「お前が運が無いのは当たり前だ。理由は単純明快!お前が剣士だからだ。」
「先生、どういう意味ですか?」
「剣の道を行く輩というのはなあ、神様に試される性質なんだ。神様ってのは、真っ直ぐひたむきに頑張ってるやつが大好きでな、己の信念を貫く剣士の生き方はお気に入りなんだそうだ。だからこそ神様は俺たちの人生に肩入れしてくる。難題にぶつかるとな、乗り越えていく過程でいろんなもんが見えてくるだろう?そうやって剣は極めて行くもんだから、わざわざ神様は俺たちのために、学んでいけるように、人生の行く先々に試練を置いといてくれてるんだ。神様が用意した難題が、お前の言う”不運”てやつなんだよ。」
「じゃあ、ぼくが剣士であり続けるなら、ずっと運の無さは変わらないってことですか?」
「そうなるな。ワシもずーっと昔から運が無いといわれてきたからのう。」
「なら、やっぱり…」
「だがな、ナスタよ。困難の向こうにあるのは、いつも苦労だけではないだろう。乗り越えただけの、もしくはそれ以上の見返りが待ってたはずだ。」
「ぼくにとってはいい学びの場でした。だけど、フェシスにとっての得なんて、無い。」
「そうかのう?今回の件で手に入ったレアな宝石。あれは、ナスタのトラブルを引き寄せる不運とフェシスの解決する幸運が、ふたつ合わさったからこそ手に入ったんじゃないか。」
ナスタの瞳は不安に揺れている。都合のよい解釈だ、と思われているかもしれない。ただ、剣の道を行くのなら、不安に駆られるだけで終わってほしくはない。同じ道を歩んだ先輩として、気付いてほしいことがある。
「ナスタはフェシスから離れたいと、本心で思っているのか?」
「それは…。」
言いよどむということは、答えが出ている証だ。ナスタに必要なのは、困難を乗り越える、あと少しだけの勇気だ。
だから逃げるな、と、ケイルンは強くその瞳に訴えかけた。息をつめた少年の瞳に、光が差し込んだ気がした。
「たしかに、そうかもしれません。ぼく、フェシスと離れたくないです。先生の言う通り、強くなるべきだ!」
キラキラと情熱の灯が少年の瞳の中で煌めいている。ケイルンは笑みを浮かべると、ガシガシと小さな頭を掻き回した。
なにやら焦げくさいにおいがする。
冒険者の卵たちが日々訓練にいそしむこの学び舎では、練習中に案山子に放った火のカケラが服について焼けてしまった、なんて話はよくあることだ。染みついたのか、誰かしらがいつも焦げているのか、ここではまれにそういうにおいがする。その学び舎の長たるケイルンが厳しい色に顔を変えたのは、布地が焦げ付いたにおいに混じって、火薬特有のにおいがしたからだ。それもシーフたちが罠に使うには適量を超えた、大量な火薬が発火したにおい。煙るようにかおるそれが倉庫の方角からしてくる、ということもあって、ケイルンは急ぎ足でにおいの元を辿っていた。
だから、倉庫に保存していた火薬の大樽ではなく、教え子の子供が元凶だとしれて、ケイルンはほっと胸を撫で下ろしたのである。
だが、どうにも様子がおかしい。頻りに棚の陰から廊下の向こうを伺っている仕草は、まるで何かから隠れようとしているようだ。ケイルンは首を傾げた。
「おーい、ナスタ!」
「うわっ。」
声を掛けると、練習用両手剣と盾を背負ったその小さな後姿がビクリと震え、
「先生、静かにっ!しーっ!」
わたわたと手を振り回しながら、ケイルンの元へ駆けてきた。近くで見ると、火薬のにおいを纏ったナスタは、服はボロボロで、空色の髪は毛先がチリチリに焦げ付き、顔は煤けている。「どうしたんだ?」と、ケイルンが口を開くと、再びナスタが「しーっ」と叫んだ。服の裾を引かれてケイルンが屈むと、ナスタは「静かにお願いします」と声を落として言い、口の前で指を立てて見せた。小さな声も、不安そうにきょろきょろと後ろを振り返っている姿も、常の溌剌としたナスタからはかけ離れていて、ケイルンはますます首を傾げる。ナスタに合わせてケイルンは声を落とした。
「派手な冒険だったみたいだな、すごい格好だ。それで?何をしてるんだ?」
「これはちょっと…いろいろあったんです。今は、その…隠れてるんです。」
「何から?」
「フェシスからです。」
フェシスと言えば、ナスタの相棒である少年シーフだ。
傾げた首がいよいよ肩に着きそうになり、ケイルンは反対側に首を傾げた。
「なぜだ?かくれんぼか?」
「……。」
ぎゅっと下唇をかみしめて、ナスタは下を向いてしまった。床を見つめる空色がユラユラと水の溢れてしまいそうなグラスの表面のように揺れている。火薬のにおいといい、随分と穏やかな話ではないようだ。
キャンディーは体の傷や消耗した精神力を回復させる魔法アイテムだ。この甘さは、心に安らぎも与えてくれることを、ケイルンは知っている。
「まあ、これでも食べて落ち着きなさい。それから、もしワシに話せることなら、話してみなさい。」
キャンディーSPを差し出すとナスタはようやく顔を上げた。勢いよく受け取って、がじがじとキャンディーを平らげると、意を決したようにナスタがケイルンの目を見た。
「ぼくは、運が無さすぎるんです!」
****
西口の墓地に最近出没する野良犬を退治する、簡単なクエストのはずだった。
フェシスが罠を大量に設置し、ナスタが野良犬を誘い出し、体力の減ったところを二人で倒す。このやり方で、順調に二人は野良犬を狩れていた。
けれど、ナスタ曰く”不運”というものが突然やってきたそうだ。
ナスタが足を滑らして転倒した。こけた拍子に触れた墓石は、たまたま老朽化していて、あっさりと倒れた。その隣にあった墓石もその隣も…、周囲の墓石はどれも脆く、そして密接していた。まるでドミノ倒しのように、一帯の墓石は倒れていったそうだ。
ただ佇んでいただけのゴーストやゾンビは、自分の墓石が壊されたのを見て怒り狂い、巻き添えをくらった他のモンスターも襲い掛かってくる。倒しても倒してもモンスターはどんどん増えていく。ゴーストからは火炎の集中砲火を、ゾンビからは囲まれて袋叩きにされて…散々な目にあったそうだ。
****
「…それはツイてなかったなのう。その状況で、よく生きて帰ってこれたもんだ。」
「フェシスのおかげでなんとかなったんです!」
パッとナスタの瞳がキラキラと輝いた。トーンダウンしていた声に、いつもの躍動感が戻ってくる。
「たまたまフェシスが持ってた火薬の瓶が割れて、設置してあった罠の上にどばーって拡がったんです。それを見たフェシスが閃いて!火薬をどんどん撒いて、罠を書き換えたら罠が全部どかーんって爆発しまして!ほとんどのモンスター吹っ飛ばしてくれました!」
「そっちはツイてたな!ははー。それで、フェシスが「ナスタのせいで酷い目にあった」って怒ったから顔を合わせたくないって話か?」
途端に、両拳を握りしめて熱く語っていたナスタの顔から生気がぬけて、しょぼくれた表情に戻ってしまった。
「…違います。フェシスはぜんぜん怒ってないんです。むしろ、ゴーストの魂がぎょーしゅくされた珍しい宝石?が、手に入ったってよろこんでるくらいで…。」
「フェシスは本当に運がいいな!それなら、なんでフェシスを避けるんだ?」
「ぼくがフェシスに合わせる顔がないからです!フェシスは優しいから、気にするなって言ってくれてるけど…。けっきょく、ぼくが運が無かったせいで、フェシスにケガをさせたのは事実ですし!フェシスはぼくを助けてくれるためにやってくれたのに、フェシスだけジョン先生に叱られてるし!」
ジョン先生というと、冒険者の家の戦闘教官ジョン・マルコのことだ。シーフや武道家のスペシャリストでもあり、フェシスの師でもある。
「どうしてジョンが?」
「…フェシスはまだ火薬に触っちゃいけなかったらしくて。」
「なるほどのう。」
ケイルンよりも先にジョンは火薬のにおいを嗅ぎつけたらしい。危険な火薬を多量に勝手に持ち出し、しかも使ったとあっては、かの短気で誰よりも教師らしい教師の友人が、どんな風に怒りをあらわにしたのか、付き合いの長いケイルンには想像がついた。
「ぼくがあんなトラブル引き起こさなかったら、フェシスも怒られずにすんだのに…。」
「持ち出した時点で、いつか叱られていたとおもうがのう。悪いことがたまたま重なっただけで、そう深刻になることないだろう。」
「だって、今日だけじゃないんですもん!いつもそうなんですよ。ぼくが、すっごく運が悪くて、簡単な任務でもいつも何かが起きるんです…。そのたびに、フェシスは巻きまれて、ぼくのこと助けてくれる。ぼくのこの運の無さが、いつかもっと危険なものを引き寄せて、フェシスに大けが負わせちゃうんじゃないか。…そうなる前に、もう一緒に居ないほうがいいのかな、って思って。」
「だからフェシスを避けてると?」
深刻な表情で、ナスタはこくりとうなづいた。
「どうしてぼくはこんなに運が無いんでしょうか…。」
トラブルメーカーな剣士と、ラッキーボーイなシーフ。どこかで聞き覚えのある言葉だ。そういう風に揶揄されなくなって、随分と月日が経っていたらしい。懐かしさに思わずケイルンが笑ってしまうと、ナスタが訝しそうな顔で見上げてきた。
「なあ、ナスタよ。よく聞きなさい。」
いつも剣術の指南をしているときのように、ケイルンはナスタの目を正面から受け止めた。不安げな表情の彼の頭をあやすように軽く撫でた。
「お前が運が無いのは当たり前だ。理由は単純明快!お前が剣士だからだ。」
「先生、どういう意味ですか?」
「剣の道を行く輩というのはなあ、神様に試される性質なんだ。神様ってのは、真っ直ぐひたむきに頑張ってるやつが大好きでな、己の信念を貫く剣士の生き方はお気に入りなんだそうだ。だからこそ神様は俺たちの人生に肩入れしてくる。難題にぶつかるとな、乗り越えていく過程でいろんなもんが見えてくるだろう?そうやって剣は極めて行くもんだから、わざわざ神様は俺たちのために、学んでいけるように、人生の行く先々に試練を置いといてくれてるんだ。神様が用意した難題が、お前の言う”不運”てやつなんだよ。」
「じゃあ、ぼくが剣士であり続けるなら、ずっと運の無さは変わらないってことですか?」
「そうなるな。ワシもずーっと昔から運が無いといわれてきたからのう。」
「なら、やっぱり…」
「だがな、ナスタよ。困難の向こうにあるのは、いつも苦労だけではないだろう。乗り越えただけの、もしくはそれ以上の見返りが待ってたはずだ。」
「ぼくにとってはいい学びの場でした。だけど、フェシスにとっての得なんて、無い。」
「そうかのう?今回の件で手に入ったレアな宝石。あれは、ナスタのトラブルを引き寄せる不運とフェシスの解決する幸運が、ふたつ合わさったからこそ手に入ったんじゃないか。」
ナスタの瞳は不安に揺れている。都合のよい解釈だ、と思われているかもしれない。ただ、剣の道を行くのなら、不安に駆られるだけで終わってほしくはない。同じ道を歩んだ先輩として、気付いてほしいことがある。
「ナスタはフェシスから離れたいと、本心で思っているのか?」
「それは…。」
言いよどむということは、答えが出ている証だ。ナスタに必要なのは、困難を乗り越える、あと少しだけの勇気だ。
「お前にとってのフェシスのように、ワシにも相棒がいた。何度もいろんなことに巻き込まれたが、またか、と飽きられはしても、結局最後まで愛想をつかされることはなかったぞ。巻き込む以上の成果を返してやろうとワシも必至じゃったからな。」
「先生の相棒って、奥さんですか?」
「いいや。あれはワシにとっての生涯のパートナーじゃが、幸運の相棒はまた別だ。」
「…もしかして、ジョン先生?」
「そのとおり」と、ケイルンは笑った。
「今思うと、死んでないのが不思議なくらい、いろんなもんに巻き込まれてた。あいつがいたから、死んでないんだろうな。見たところ、ナスタとフェシスの不運・幸運ぶりはワシとジョンの関係によく似ている。お前にとっても、一生涯の相棒になるやもしれん。」
「先生の相棒って、奥さんですか?」
「いいや。あれはワシにとっての生涯のパートナーじゃが、幸運の相棒はまた別だ。」
「…もしかして、ジョン先生?」
「そのとおり」と、ケイルンは笑った。
「今思うと、死んでないのが不思議なくらい、いろんなもんに巻き込まれてた。あいつがいたから、死んでないんだろうな。見たところ、ナスタとフェシスの不運・幸運ぶりはワシとジョンの関係によく似ている。お前にとっても、一生涯の相棒になるやもしれん。」
「先生たちみたいな…!」
「巻き込んですまないと思うなら、それ以上の見返りを手に入れろ。剣士なら学んで強くなれ。嘆いていたってどうしようもなかろう。本当は一緒に居たいと思うなら、相手にそう思わせるような男になるべきだろう。」だから逃げるな、と、ケイルンは強くその瞳に訴えかけた。息をつめた少年の瞳に、光が差し込んだ気がした。
「たしかに、そうかもしれません。ぼく、フェシスと離れたくないです。先生の言う通り、強くなるべきだ!」
キラキラと情熱の灯が少年の瞳の中で煌めいている。ケイルンは笑みを浮かべると、ガシガシと小さな頭を掻き回した。
「まあ、長くなったが、何が言いたいことかというと、努力でいくらでも解決できることだから心配するようなことじゃないんだよ。ああいうタイプは、利益より損が多いと気付けば勝手に離れていくしのう。それも嫌だって言うなら、一緒に居たいと思わせ続けろ。ワシのように、捕まえとけ!」
「はい!」と元気よく答えてから、ふと、ナスタは思案気な顔をした。
「先生、ひとつ質問です!先生の奥さんは、一生のパートナーなんですよね?」
「ああ、そうだぞ。」
「けど、ジョン先生も一生のパートナーなんですよね?」
「そうだ。」
「先生…」
すると、ナスタはどこか咎めるような視線を向けてくる。ん?と、ケイルンが首を傾げると、ナスタは思い切ったように口を開いた。
「それって二股って言うんですよ!」
ナスタよ、それは違うぞ。
神は自分にまだ乗り越えるべき困難を用意してくれたことを、ケイルンは知った。不運がすぐそこに来ていた。
「…お前は子供に何の話をしてるんだ。」
「フェシス!ジョン先生!」
「おいナスタ!どこにいるのかともったら…。探したんだからな!」
不機嫌そうな表情のシーフが二人現れた。
「ジョン先生!ケイルン先生は結婚されてるんですから、先生は2番目のパートナーで我慢してくださいね!」
「…ケイルン、お前本当に何を吹き込んだんだ。」
つかつかと詰め寄るジョンと行き違いに、ナスタはフェシスに駆け寄った。「フェシス!」と、その名を叫んで、両手を握る。
「僕とずーっと一緒にいてください!」
プロポーズか?と笑う学長の頭を教育上の適切な処置にのっとって、ジョンははたいた。フェシスは爆発に吹き飛ばされたせいでナスタの頭が壊れたと本気で思ったらしく、以後、火薬を使った罠は作らなくなったそうだ。
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私くらいのね、こじらせた腐女になりますとね、キャラの初期ステータスを比較しただけで妄想がいくらでもできるんですよ。初期ステ運0の剣士と、運自動上昇のシーフ!対比っていいなあ。言動が激しくキモチワルくて申し訳ありません・・・!
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