1日1文、現実逃避
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日記・文章の練習帳。
挑戦中のお題→恋する動詞111題 。
REDSTONE無名・二次・腐カテゴリーからそれぞれどうぞ。
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『冒険者のススメ』より、
剣士(ナスタ)とシーフ(フェシス)+冒険者の家の教官たち。
ふたりは12歳。
剣士(ナスタ)とシーフ(フェシス)+冒険者の家の教官たち。
ふたりは12歳。
こんな生き物、自分と同じ人間だとは思えない、とフェシスは思った。金色の産毛に覆われた、ホクロひとつない乳白色のすべらかな肌も、シュークリームのようにぷっくりと膨らんだ薄桃色の頬も、色素の薄いまん丸な瞳も、低い鼻も、山の形をした口も、なによりも3頭身にも満たない小さな体が、あまりにも自分の知ってる人の形からはかけ離れているので。小さな手足をばたばたと、まん丸な瞳はきょろきょろと動きまわる様は、人間というより子犬を見ているようだ。
「はーっ、かっわいいなあ!」
「まあ、よかったわねえ、可愛いですって。」
リラが、腕の中のその生き物のやわらかそうな髪を撫でると、笑みを浮かべてきゃっきゃっと声をあげた。
覗き込むように顔を近づけていたナスタがつられたように嬉しそうな声を上げた。
そんなナスタの一歩後ろで、まるで言葉を理解しているような反応を返したそれにフェシスは訝しげな顔をした。
「こんなに近くで赤ちゃん見たの、ボクら初めてなんです!」
「あら、そうなの。兄弟は?」
「はい、ボクもフェシスも一人っ子なので。わぁ、フェシス見てよ!ほっぺたプニプニだあ!フェシスも触らしてもらいなよー。」
「俺はいい。」
「あら、フェシスは小さい子苦手?」
「そういうわけじゃないけど...。」
「そうだ、洗濯物をしてる間、しばらくこの子のお守りしてもらえないかしら。」
予想外の提案にえっ、とフェシスが戸惑いの声を上げている間に、素早くナスタが「やります」と答えてしまっていた。
「バカ!むりだろ、やったことないのに!」
「大丈夫よ。もうすぐお昼寝の時間だし、適当に抱っこしてくれたら勝手に寝ちゃうから。」
ゆっくりと横抱きに、赤子がナスタの腕の中に納まった。
「うわうわっ、思ったより重いんですね!それになんだかとってもあったかい!」
「じゃあ、よろしくねー。」
リラが部屋を出ていくと、ナスタは赤子を抱えたまま、リラの座っていたソファーに腰かけた。片腕で首を支え、赤子の身体を膝の上にのせて、もう片方の手を自由にさせた。ニコニコと笑いながらツンツンとナスタは赤子の頬をつついた。
「ホントにかわいい!ほら、フェシスも触ってみなよ。食わず嫌いはよくないよフェシス〜。」
「食う気か。」
「食べちゃいたいくらい可愛いよ!」
ほらほら、と促されてフェシスは渋々手を伸ばした。
ナスタを見上げていた丸い瞳が、フェシスの方に向けられる。頬を目指した人差し指のさきっぽを、きゅっと小さな指に包み込まれた。
「掴まれた!」
「かわいい!」
柔らかくて、暖かくて、そして驚くほど小さな指だった。小枝のような細い指に、おまけのように小さな小さな爪がついている。無理やり振りほどいたら、壊れてしまいそうだとフェシスは思った。
赤子の顔を見やると、目があった。無垢な瞳が自分を見上げているのを見て、フェシスの中でキュンと何かが音を立てた。
「だっこしてみる?」
「…いい、触るのこわい。」
「そんなにおっかなびっくりでなくていーのにー。ねー?」
ゆりかごのようにナスタが腕を動かすと、赤子の指は離れていった。
とくに反応は無く、ぽーっとした表情をしているけれど、嫌がってはいないようだ。
調子に乗ってきたようで、ナスタは今度は赤子の脇の下を両手でつかんで、膝の上に立たせてみた。間違って手を離してしまえば床に真っ逆さまに落ちてしまう不安定な体制に、フェシスはハラハラと胸を騒がせた。
「…気をつけろよ、ナスタ。」
「大丈夫だよー。」
ちょん、ちょん、ちょんと左右に動かして歩かせてみる。相変わらず赤子はぽーっとしている。ちゃんと楽しめているのだろうか?顔を覗き込んだフェシスと目が合うと、赤子はにかっと一瞬笑みを浮かべた。
「笑った!」
「ボクもしかしてうまいんじゃない?そーれ、たかいたかーい!」
小さな体をめいいっぱい腕を伸ばして高く掲げる。そのまま左右に揺らしてみたり、昇降を繰り返してみた。赤子がどんな反応をしているのか見えなくなったので、ソファを周りこんでナスタの後方から赤子の顔を見上げたフェシスはぎょっとした。
「待て、ナスタ。なんか様子が変だぞ!」
「へ?」
相変わらず目はぽーっとしていたが、首をすくめるように涎掛けに埋めた赤子の顔は、ぷっくりした頬がますますぷっくり膨らんでいるように見えて、どことなく不満げそうに見える。うっ、うっ、と小さく唸るような声が聞こえた。
ナスタが自分の膝に赤子を下ろすと、きゅっと眉根が寄せられた。
うっ、うっ、うっ、ぅああああっ!
猫が喧嘩をする時のような、つんざくような鳴き声が上がった。
「うわあっ、なな、ないちゃったあ!」
「バカ!バカナスタ!」
「ぼ、ぼくのせーなの?!」
真っ白だった肌を今や首まで真っ赤に染め、ぎゅっと目も眉も思い切り顰め、唇をわなわなと震わせながら、赤子が絶叫する。ナスタとフェシスの顔は真っ青に染まった。
うああああっ!うあああああっ!
「ほ、ほーら泣かないでえ、ゆりかごだよー?ゆーらゆらー。」
うあーああっ!うあーああああっ!
「悪化してる!」
「ダメだ―!」
「もっとうまくあやせ!」
「無理だよう!」
こんな小さい体のどこからそんな声が出てくるのかと、驚くほどの大きな声で赤子が泣く。
ゆらゆら揺らしてみても、部屋の中を歩き回ってみても…てんで効果が得られやしない。全身を使って嫌々と暴れられる。
「誰か大人探してくる!」
もう自分たちの手には負えないと、フェシスは部屋を飛び出した。
「うおっ、どうしたフェシス?帰ってたのか――、」
「いいとこに!ちょっとこっち来て!」
フェシスが扉を開けたまさにその時、廊下をジョンが通ったところだった。突然開いた扉に驚いて飛び退いたジョンの腕を引っ張ってフェシスは部屋に引きづり込んだ。
部屋中に響き渡る絶叫に、ジョンはすぐさま状況を理解してくれたようだ。
「ジョン先生ー!」
半泣きのナスタがこれ幸いと言わんばかりに、ジョンに放り投げるように赤子を手渡した。赤子はぽろぽろと涙をこぼしながら泣き叫んでいる。腕に座らせるように抱きかかえ、背中をぽんぽんと叩いてみるが、一向に泣きやむ気配はない。むしろ、げしげしと嫌がるように腹を蹴られている。時計を見上げたジョンは「そうか、お昼寝の時間か」と呟いた。
「可哀そうに、寝たいのに眠れないから辛いんだな。これは俺でもどうにもならん。」
「どうするのさ先生!」
「リラか、ケイルン、どっちでもいいから呼んできてくれないか?」
「呼んだか?」
「ケイルン先生!」
ひょっこりと、庭師のような作業着を着たケイルンが開けっ放しの扉から顔を出した。
「はっはっはっ、元気だなあ。」
ケイルンがジョンのように赤子を抱くと、ピタリと、泣き叫ぶ声がやんだ。ぽーっとしたあの表情に戻っている。ケイルンが真ん丸な目の縁に浮かんでいた涙の粒を指で掬ってやると、ぐりぐりと甘えるようにケイルンの胸に顔を埋めた。小さな手がきゅっとつなぎを掴んでいる。
「もう少しで寝そうだな、ベットへ連れて行こうか。フェシス、ナスタ、お守をありがとう。」
フェシスとナスタの頭を一回ずつ撫でた後、ケイルンは赤子と共に部屋を出ていった。
部屋の中には、困惑と不満の色を湛えた二人の子供が残された。
「…なんだったんだあれ。」
「…ジョンせんせ~…。」
「やっぱり親が一番だってことだ。あの子は人見知りしない子だが、やっぱり一番安心できる場所は両親のすぐそばで、傍にいないとどうしても寂しくなっちまう時があるのさ。不思議なもんでどんなに泣いてても、あの二人が抱くとすぐに泣き止むんだからなあ。」
やれやれ、と肩をすくめてジョンも部屋を出ていった。
さぞしょんぼりした顔をしているだろうと、フェシスはそっと隣を伺い見て、はっと息をつめた。
「そっかあ、両親かあ。」
静かな表情だった。
きっと、いつものように父親のことを思い出そうとしているんだろうと、フェシスは思った。ナスタがこうなってしまったら、フェシスはナスタが返ってくるまで待つしかない。そのままどこかへナスタが1人で行ってしまわないように、いつものようにそっとナスタの手を握る。さきほどの赤子の孤独を嫌った叫び声よりも、今の静けさの方が耳に痛かった。彼の父はいまどこにいるのだろうかと、フェシスは静けさに思いを馳せた。
「はーっ、かっわいいなあ!」
「まあ、よかったわねえ、可愛いですって。」
リラが、腕の中のその生き物のやわらかそうな髪を撫でると、笑みを浮かべてきゃっきゃっと声をあげた。
覗き込むように顔を近づけていたナスタがつられたように嬉しそうな声を上げた。
そんなナスタの一歩後ろで、まるで言葉を理解しているような反応を返したそれにフェシスは訝しげな顔をした。
「こんなに近くで赤ちゃん見たの、ボクら初めてなんです!」
「あら、そうなの。兄弟は?」
「はい、ボクもフェシスも一人っ子なので。わぁ、フェシス見てよ!ほっぺたプニプニだあ!フェシスも触らしてもらいなよー。」
「俺はいい。」
「あら、フェシスは小さい子苦手?」
「そういうわけじゃないけど...。」
「そうだ、洗濯物をしてる間、しばらくこの子のお守りしてもらえないかしら。」
予想外の提案にえっ、とフェシスが戸惑いの声を上げている間に、素早くナスタが「やります」と答えてしまっていた。
「バカ!むりだろ、やったことないのに!」
「大丈夫よ。もうすぐお昼寝の時間だし、適当に抱っこしてくれたら勝手に寝ちゃうから。」
ゆっくりと横抱きに、赤子がナスタの腕の中に納まった。
「うわうわっ、思ったより重いんですね!それになんだかとってもあったかい!」
「じゃあ、よろしくねー。」
リラが部屋を出ていくと、ナスタは赤子を抱えたまま、リラの座っていたソファーに腰かけた。片腕で首を支え、赤子の身体を膝の上にのせて、もう片方の手を自由にさせた。ニコニコと笑いながらツンツンとナスタは赤子の頬をつついた。
「ホントにかわいい!ほら、フェシスも触ってみなよ。食わず嫌いはよくないよフェシス〜。」
「食う気か。」
「食べちゃいたいくらい可愛いよ!」
ほらほら、と促されてフェシスは渋々手を伸ばした。
ナスタを見上げていた丸い瞳が、フェシスの方に向けられる。頬を目指した人差し指のさきっぽを、きゅっと小さな指に包み込まれた。
「掴まれた!」
「かわいい!」
柔らかくて、暖かくて、そして驚くほど小さな指だった。小枝のような細い指に、おまけのように小さな小さな爪がついている。無理やり振りほどいたら、壊れてしまいそうだとフェシスは思った。
赤子の顔を見やると、目があった。無垢な瞳が自分を見上げているのを見て、フェシスの中でキュンと何かが音を立てた。
「だっこしてみる?」
「…いい、触るのこわい。」
「そんなにおっかなびっくりでなくていーのにー。ねー?」
ゆりかごのようにナスタが腕を動かすと、赤子の指は離れていった。
とくに反応は無く、ぽーっとした表情をしているけれど、嫌がってはいないようだ。
調子に乗ってきたようで、ナスタは今度は赤子の脇の下を両手でつかんで、膝の上に立たせてみた。間違って手を離してしまえば床に真っ逆さまに落ちてしまう不安定な体制に、フェシスはハラハラと胸を騒がせた。
「…気をつけろよ、ナスタ。」
「大丈夫だよー。」
ちょん、ちょん、ちょんと左右に動かして歩かせてみる。相変わらず赤子はぽーっとしている。ちゃんと楽しめているのだろうか?顔を覗き込んだフェシスと目が合うと、赤子はにかっと一瞬笑みを浮かべた。
「笑った!」
「ボクもしかしてうまいんじゃない?そーれ、たかいたかーい!」
小さな体をめいいっぱい腕を伸ばして高く掲げる。そのまま左右に揺らしてみたり、昇降を繰り返してみた。赤子がどんな反応をしているのか見えなくなったので、ソファを周りこんでナスタの後方から赤子の顔を見上げたフェシスはぎょっとした。
「待て、ナスタ。なんか様子が変だぞ!」
「へ?」
相変わらず目はぽーっとしていたが、首をすくめるように涎掛けに埋めた赤子の顔は、ぷっくりした頬がますますぷっくり膨らんでいるように見えて、どことなく不満げそうに見える。うっ、うっ、と小さく唸るような声が聞こえた。
ナスタが自分の膝に赤子を下ろすと、きゅっと眉根が寄せられた。
うっ、うっ、うっ、ぅああああっ!
猫が喧嘩をする時のような、つんざくような鳴き声が上がった。
「うわあっ、なな、ないちゃったあ!」
「バカ!バカナスタ!」
「ぼ、ぼくのせーなの?!」
真っ白だった肌を今や首まで真っ赤に染め、ぎゅっと目も眉も思い切り顰め、唇をわなわなと震わせながら、赤子が絶叫する。ナスタとフェシスの顔は真っ青に染まった。
うああああっ!うあああああっ!
「ほ、ほーら泣かないでえ、ゆりかごだよー?ゆーらゆらー。」
うあーああっ!うあーああああっ!
「悪化してる!」
「ダメだ―!」
「もっとうまくあやせ!」
「無理だよう!」
こんな小さい体のどこからそんな声が出てくるのかと、驚くほどの大きな声で赤子が泣く。
ゆらゆら揺らしてみても、部屋の中を歩き回ってみても…てんで効果が得られやしない。全身を使って嫌々と暴れられる。
「誰か大人探してくる!」
もう自分たちの手には負えないと、フェシスは部屋を飛び出した。
「うおっ、どうしたフェシス?帰ってたのか――、」
「いいとこに!ちょっとこっち来て!」
フェシスが扉を開けたまさにその時、廊下をジョンが通ったところだった。突然開いた扉に驚いて飛び退いたジョンの腕を引っ張ってフェシスは部屋に引きづり込んだ。
部屋中に響き渡る絶叫に、ジョンはすぐさま状況を理解してくれたようだ。
「ジョン先生ー!」
半泣きのナスタがこれ幸いと言わんばかりに、ジョンに放り投げるように赤子を手渡した。赤子はぽろぽろと涙をこぼしながら泣き叫んでいる。腕に座らせるように抱きかかえ、背中をぽんぽんと叩いてみるが、一向に泣きやむ気配はない。むしろ、げしげしと嫌がるように腹を蹴られている。時計を見上げたジョンは「そうか、お昼寝の時間か」と呟いた。
「可哀そうに、寝たいのに眠れないから辛いんだな。これは俺でもどうにもならん。」
「どうするのさ先生!」
「リラか、ケイルン、どっちでもいいから呼んできてくれないか?」
「呼んだか?」
「ケイルン先生!」
ひょっこりと、庭師のような作業着を着たケイルンが開けっ放しの扉から顔を出した。
「はっはっはっ、元気だなあ。」
ケイルンがジョンのように赤子を抱くと、ピタリと、泣き叫ぶ声がやんだ。ぽーっとしたあの表情に戻っている。ケイルンが真ん丸な目の縁に浮かんでいた涙の粒を指で掬ってやると、ぐりぐりと甘えるようにケイルンの胸に顔を埋めた。小さな手がきゅっとつなぎを掴んでいる。
「もう少しで寝そうだな、ベットへ連れて行こうか。フェシス、ナスタ、お守をありがとう。」
フェシスとナスタの頭を一回ずつ撫でた後、ケイルンは赤子と共に部屋を出ていった。
部屋の中には、困惑と不満の色を湛えた二人の子供が残された。
「…なんだったんだあれ。」
「…ジョンせんせ~…。」
「やっぱり親が一番だってことだ。あの子は人見知りしない子だが、やっぱり一番安心できる場所は両親のすぐそばで、傍にいないとどうしても寂しくなっちまう時があるのさ。不思議なもんでどんなに泣いてても、あの二人が抱くとすぐに泣き止むんだからなあ。」
やれやれ、と肩をすくめてジョンも部屋を出ていった。
さぞしょんぼりした顔をしているだろうと、フェシスはそっと隣を伺い見て、はっと息をつめた。
「そっかあ、両親かあ。」
静かな表情だった。
きっと、いつものように父親のことを思い出そうとしているんだろうと、フェシスは思った。ナスタがこうなってしまったら、フェシスはナスタが返ってくるまで待つしかない。そのままどこかへナスタが1人で行ってしまわないように、いつものようにそっとナスタの手を握る。さきほどの赤子の孤独を嫌った叫び声よりも、今の静けさの方が耳に痛かった。彼の父はいまどこにいるのだろうかと、フェシスは静けさに思いを馳せた。
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